空虹桜>川本真琴(※1)のピアノ弾き語り的なアルバム「ふとしたことです」(CD / MP3 / iTS)を話す前編です。
U・B>毎度のことながら、ファン感の薄い導入ですが、まずは1曲目「アイライブユー」で、川本真琴正式復活の3rdアルバム
「音楽の世界へようこそ」(※2)収録曲。
空虹桜>そうか。このアルバムは、毎曲その手の説明台詞が入るのか。
U・B>基本的にセルフカヴァアルバム(※3)だから致し方なし。
空虹桜>そりゃまぁ、そうですけど。とりあえず、この曲はやっぱりリリース時に発表されたPVのイメージが強くて(※4)、このアルバム
で聴いた時のファーストインプレッションとしては、PVっぺぇっていう。
U・B>なんかいろいろツッコミどころがあるけど、ツッコんだら負けみたいな感想ですね。
空虹桜>まぁ、うん。そうなんだけど、なんだか富山感みたいなのを強く感じるんだよね。行ったこと無いけど。富山。
U・B>俺も富山行ったこと無いッスな。夜行列車で素通りしただけ。
空虹桜>知らんけど、ピアノの音の鮮明さみたいなモノが、冷えた日中のイメージに合ってるし、小川というか用水路の
キラキラ光を反射する感じにもあってる。
U・B>ああ。そう、たしかに、この曲聴いて、この人ピアノ巧いんだなぁ思った。
空虹桜>特段テクニック的なのを発揮してるわけではないんだけど、使いこなした親愛なる道具としてピアノがある人の
音なんだよね。
U・B>久々に音楽詳しくない人が知ったかしてる感全開の発言ですが、続いて2曲目「fish」で、こちらは直近
出たミニアルバム「願いがかわるまでに」(※5)収録曲。
空虹桜>「願いがかわるまでに」の時は四つ打ち(※6)だったのが一変で、こっちのが好きというか、こっちのが歌詞にあっ
てる。
U・B>なにせ、歌詞のラストがだんだんと 夕暮れになると 海が静かに なってゆく(※7)なので、「静
か」なんて四つ打ちから一番遠い言葉ですからね。
空虹桜>とくに川本真琴完全復活後の楽曲は、サイコなのに文字数すくない歌詞だから、弾き語るにはあってんだよね。
U・B>サイコさがあるから、過去の川本真琴の連続感があるんですよね。
空虹桜>作家性ってヤツだよねぇ。
U・B>まぁ、この1・2年で、川本真琴のアンタッチャブルクィーン感が万人に知れ渡ったのはいいことだと思いますけどね。さて、3曲
目は彼の名曲「愛の才能」で、まさかのジャジーでブルースなアレンジ。
空虹桜>でも、説得感があるのはやっぱりピアノがヒップに跳ねてるから?(※8)
U・B>ですかねぇ。結局、この曲は岡村ちゃんが作曲してる(※9)こともあって思春期爆発モノなわけじゃないですか。
空虹桜>何億回聴いてもイケナイことでも 経験したいの 体で悟りたい 窒息しそうな スリルな
瞬間 感じたいの もっと そっと 誰よりそばにいて このままちょっとだけ Kiss!
(※10)ってフレーズの見事さは額に入れて飾りたいもんね。
U・B>女子高生ブームみたいな時代(※11)でこれは、本当にキャッチィだったし、同性でも好きな人と嫌いな人がハッキリしてた曲で
はあるんだけど、一番はやっぱり富山育ちの田舎の女の子が都会的な曲を唄ってたって事実なんだと思うん
です。今から考えると。
空虹桜>そこは岡村ちゃんの助力の賜物だよね。
U・B>ええ。だからこそ、実はそこでひっそりと行われていた背伸びみたいなモノが、今この歳になってジャズっぽいアレンジ
をすることで、隠し味みたいに出てきてんじゃないかなぁと思うんです。
空虹桜>ああ。なんか、評論家みたいなこと言うね。
U・B>うるせぇ。
空虹桜>改めてこの曲はいい曲だし、初めてこの曲を「HEY!HEY!HEY!」(※12)で聴いた時に、この人に惚れ込んだ自分を
褒めてあげたいアレンジで、とくに最後の「Kiss!」の一言が完璧。
U・B>うん。このアレンジであればそう終わってくれなきゃ!って感じですよね。次の4曲目が「gradation」で、こちらも「願いが
かわるまでに」収録曲。
空虹桜>さっきの「fish」と同じで、クラブっぽいというか、2013年頃っぽいアレンジだったのが、すっかり落ち着いた印象。
U・B>いろいろ知った上でこの歌詞読み返すと、他の男とそんなんだったら遊んじゃうからね カッコいい
子と旅館の浴衣で交際中 若い女子とか仕事やネームを選ぶんだね I talk you about
the love in my body(※13)って、つまり、浮気旅行中に本命嫉妬させたい曲じゃないですか。
空虹桜>まぁ、そうだよね。本命のことが好きすぎて振り切れた方向へ行ってる。
U・B>でも実は、そこよりも重要なのは、ネームを選ぶんだねのワンフレーズで、つまり、マンガ家とも付き合って
たことがありますと(※14)
空虹桜>映画監督かもしれないじゃん!(※15)
U・B>はっ!そうか。それだ!ハマジム界隈だ!!(※16)
空虹桜>大丈夫?その発言。
U・B>たぶん。
空虹桜>楽曲ぜんぜん触れてないから触れておくと、この曲もやっぱり弾き語りアレンジの方が好きで、好きな人の夢でも見な
がら眠りたいわ!とか思う。
U・B>それはそれで結構大変だと思いますけどね。寝起きとか、隣りにいなくて凹みますよ。
空虹桜>うわ〜っ、アンタがリアルなこと言うと気持ち悪いわぁ。
U・B>悪かったな。今回最後の5曲目は「OCTOPUS THEATER」で、こちらは名盤な2ndアルバム「gobbledygook」
(※17)収録曲。
空虹桜>原曲との印象が一番違わない曲かなぁ。
U・B>どっちも歌詞の割にはちょっと軽めのアレンジ。
空虹桜>この曲にしろ、他の曲にしろ、川本真琴を好きだなぁと思うのは、誰かと一緒にいる時に感じてしまう孤独を
唄ってくれるからで、この曲はどっちのアレンジでもしっかり孤独だから、印象が変わらないのかなぁ。
U・B>うん。わからん。とりあえず、「愛の才能」より「OCTOPU THEATER」のがキスしたくなる!
空虹桜>アンタ、こないだやらかしたとか懺悔してた(※18)のに、まだ言うか?
U・B>いや・・・ホント、ごめんなさい。
空虹桜>アタシに謝っても仕方ないでしょ?
U・B>ええ。でも、ベロチューって気持ちいいじゃないですか!
空虹桜>なんの話だよ!
U・B>すみません。ごめんなさい。じゃあ、最後にまとめを。
空虹桜>いろいろ喋ってきたけど、小沢健二(※19)といいさ、目の前で本人が唄ってくれることは、なんだかん
だで幸福なんですよ。アタシにとって。気まぐれに生きてるけど、赤平(※20)に生まれ育った自分が、まさか眼前でライヴ
見る日が来るとは思ってなかったし、こうやってカヴァを聴いてると、とくに「愛の才能」に顕著だけど、トータルで見た
ら生きてる方がマシだなぁってしみじみ感じるアルバムなのです。アタシには。(※21)
※1 川本真琴:福井が生んだシンガソングライタ。90年代を駆け抜けた才能。本文で言及されている通り、富山出身。
※2 音楽の世界へようこそ(Amazon / iTS):川本真琴の3rdアルバム。クロスフェーダでは第514回と第523回で喋ってます。
※3 セルフカヴァ:自分で自分の曲を収録し直した曲のこと。その際アレンジが変わると「セルフカヴァ」といい、変わらないと「再録」という。だいたいの話。
※4 PV:プロモーションビデオの略。最近はもっぱらMV(ミュージックビデオ)と呼ばれるけど、同じこと。とりあえず、話してたPVはこちら。
※5 願いがかわるまでに(CD / MP3 / iTS):川本真琴の2013年発売ミニアルバム。クロスフェーダでは第710回で喋ってます。
※6 四つ打ち:ハウスとかで、一小節にバスドラムが4発入ってる楽曲のこと。昔はテクノとハウスの違いもわからんかったのになぁ(遠い目)
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 ピアノがヒップに跳ねてるから?:ちょっとジャズっぽいピアノなので、空虹さんはそんな洒落た言い回しをしてると思われる。
※9 岡村ちゃん:僕らが大好きな岡村靖幸ちゃんのことです!
※10 拡大部は歌詞より引用。
※11 女子高生ブームみたいな時代:a.k.a 宮台真司の全盛期。
※12 HEY!HEY!HEY!:ダウンタウンがメインMCを務めていた音楽番組。
※13 拡大部は歌詞より引用。
※14 ネーム:漫画の未完成原稿の一段階、設計図。
※15 映画の時は、普通コンテだな。俺、乗って喋ってるけど、ここはツッコミどこだったな・・・
※16 ハマジム:カンパニー松尾の所属するアダルトビデオメーカ。皆大好き「テレクラキャンボール」の制作元。
※17 gobbledygook(Amazon):川本真琴の2ndアルバムにして、超名作。クロスフェーダでは第175回と183回で喋ってます。
※18 懺悔してた:詳しくは第873回のクロスフェーダで!って、失態をそんなアピってどうすんだ?<自分
※19 小沢健二:渋谷系の王子様。まさか2017年にフジロック出るとか!
※20 赤平:空虹とU・Bの出身地。北海道の真ん中からチョイ左。
※21 空虹桜38行。U・B37行で、俺の勝ち。まさかの接戦で、ちょっとびっくらこいた。